【Vol.9】Power BIレポートの共有方法|Power BI Serviceへの発行と権限設定

財務DX / Power BI KPI ダッシュボード作成シリーズ(最終回)

目次

はじめに

前回のVol.8では、これまで作成したダッシュボード(レポート)の見た目を整えました。しかし、このレポートはまだ自分のPCの中にあるだけで、ほかの人は見ることができません。

最終回の今回は、完成したレポートをPower BI Serviceに発行(Publish)し、経営層や現場メンバーが閲覧できる状態にします。あわせて、発行後のデータ更新方法と、閲覧者の権限設定についても解説します。

「ダッシュボード」と「レポート」について
本シリーズで「ダッシュボード」と呼んできたものは、Power BIの用語では「レポート」にあたります。
Power BI Serviceには「Dashboard」という別の機能もあります。複数のレポートからビジュアルを選んで1つの画面にまとめる機能です。
今回は、1つのレポートでKPIを確認できるため、Dashboard機能は使わず、レポートをそのまま共有します。以降は「レポート」と表記します。

スクリーンショットについて
本シリーズでは、日本語版・英語版の記事で共通のスクリーンショットを使用するため、掲載しているPower BI Desktopのスクリーンショットは英語表示で統一しています。
本文ではメニュー名や操作内容を日本語でも併記しているため、日本語版Power BI Desktopをご利用の場合でも、そのまま読み進められます。

今回の作業の流れ

ステップ内 容
Step 1Power BI Serviceにサインインする
Step 2ワークスペースを作成する
Step 3Power BI Desktopからレポートを発行する
Step 4Power BI Serviceで発行された項目を確認する
Step 5データの更新方法を確認する
Step 6ユーザーを追加して権限を設定する
Step 7配布前に確認する

事前準備

Power BI Serviceにレポートを発行するには、組織アカウント(職場または学校のアカウント)が必要です。GmailやOutlook.comなどの個人用メールアドレスではサインインできません。

組織アカウントがない場合は、Microsoft 365の無料トライアルなどを利用して準備できます。利用条件や申込方法については、Microsoft公式サイトを参照してください。

また、レポートを発行、共有するには、Power BI Pro または Premium Per User(PPU)のライセンスも必要です。共有される側も、原則ProまたはPPUのライセンスが必要です。Power BI Proのライセンスについては、Microsoft公式サイトで確認してください。

本記事は、組織アカウントとPower BI Proライセンスを持っている前提で進めます。

Step 1:Power BI Serviceにサインインする

ブラウザでPower BI Serviceを開きます。

「Sign in(サインイン)」画面が表示されたら、「Email or phone(メールまたは電話)」欄に、組織アカウントのメールアドレスを入力し、「Next(次へ)」をクリックします。次の画面でパスワードを入力して、サインインを完了します。

サインインが完了すると、画面右上にアカウントのアイコンが表示されます。

Step 2:ワークスペースを作成する

Power BI Serviceでは、自分専用の「My workspace(マイ ワークスペース)」と、チームで利用する「Workspace(ワークスペース)」があります。

ワークスペース使途
My workspace
(マイ ワークスペース)
自分専用の作業スペースです。個人的な確認や下書きに利用できます。
Workspace
(ワークスペース)
チームやプロジェクト単位で、レポートやデータモデルを共有・管理するための作業スペースです。

今回は、チームでレポートを共有・管理するため、「Operational & Financial KPIs」という名前で新しいワークスペースを作成します。

Power BI Serviceの画面左のメニューで、「Workspaces(ワークスペース)」➜「+ New workspace(+ 新しいワークスペース)」をクリックします。

「Create a workspace(ワークスペースを作成する)」画面の「Name(名前)」欄に、「Operational & Financial KPIs」を入力し、「Apply(適用)」をクリックします。

Description(説明)やDomain(ドメイン)の入力は任意です。今回は空のままにします。

作成が完了すると、空のワークスペースの画面が開きます。ワークスペースを作成した人は、自動的にそのワークスペースの管理者になります。

Step 3:Power BI Desktopからレポートを発行する

Power BI Serviceでワークスペースを作成できたら、Power BI Desktopからレポートを発行(Publish)します。

Vol.8まで作成した「KPI Dashboard.pbix」をPower BI Desktopで開き、まだサインインが完了していない場合は、右上の「Sign in(サインイン)」から、同じ組織アカウントでサインインしてください。

「Home(ホーム)」タブ ➜「Publish(発行)」をクリックします。ファイルが未保存の場合は、保存するよう求められます。

「Publish to Power BI(Power BIに発行する)」画面で、Step 2で作成した「Operational & Financial KPIs」をクリックし、「Select(選択)」をクリックします。「My workspace(マイワークスペース)」に発行すると、ほかの人と共有できませんので、必ず「Operational & Financial KPIs」を選んでください。

「Success!(成功!)」と表示されたら発行は完了です。

下の「Open ‘KPI Dashboard.pbix’ in Power BI(Power BIで’KPI Dashboard.pbix’を開く)」をクリックし、Power BI Serviceを開きます。

Power BI Serviceで開いたレポートで、スライサー、カード、グラフなどを操作し、Power BI Desktopと同じように動くことを確認してください。

Step 4:Power BI Serviceで発行された項目を確認する

Power BI Serviceの画面左のメニューで、「Workspaces(ワークスペース)」を開き、Step 2で作成した「Operational & Financial KPIs」をクリックします。ワークスペース内の一覧に、発行した項目が表示されます。

Power BI Desktopからレポートを発行すると、通常、次の2つの項目が作成されます。「Type(タイプ)」列で種類を確認できます。

Type内容
Report(レポート)Power BI Desktopで作成したカードやグラフなどのビジュアルを表示する画面です。
閲覧者が開くのはこちらです。
Semantic model
(セマンティックモデル)
テーブル、メジャー、テーブル間のリレーションシップなど、レポートのデータを管理するための仕組みです。データの更新設定も、ここで行います。
以前は「データセット(Dataset)」と呼ばれていました。

Step 5:データの更新方法を確認する

Power BI Desktopからレポートを発行した時点では、その時点のレポートとデータがPower BI Serviceに保存されます。その後、参照元のCSVファイルを更新しても、Power BI Service上のデータは自動的には更新されません。PC内のCSVファイルには、Power BI Serviceから直接アクセスできないためです。(「オンプレミス データ ゲートウェイ」を設定すれば更新できますが、本シリーズでは扱いません。)

今回は、Power BI Desktopからレポートを再発行する方法を説明します。毎月のデータ更新は、次の手順で行います。

  1. 参照元のCSVを、新しいデータに差し替えます。ファイル名と保存場所は変えないでください。(変えると更新が失敗します)
  2. Power BI Desktopで「KPI Dashboard.pbix」を開き、「Home(ホーム)」タブの「Refresh(更新)」をクリックします。
  3. データが正しく更新されたことを確認します。
  4. 日付スライサーの期間を、最新月(例:2026/08/01〜2026/08/31)に変更します。スライサーの選択状態も、発行したレポートに保存されます。
  5. 「Home(ホーム)」タブの「Publish(発行)」をクリックします。
  6. 発行先に「Operational & Financial KPIs」を選択し、「Select(選択)」をクリックします。
  7. 「Replace(置き換える)」の確認画面が表示されたら、内容を確認して置き換えます。

再発行すると、Power BI Service上のレポートも更新されます。通常、同じレポートを更新するため、共有先に案内したリンクをそのまま利用できます。Power BI Desktop上のグラフなどのデザインを修正したときも、手順5〜7で再発行してください。

補足:CSVをOneDriveやSharePointに保存している場合
CSVファイルをOneDriveやSharePointに置いてPower BIに取り込む場合は、レポートを自動で更新する方法もありますが、本記事では扱いません。

Step 6:ユーザーを追加して権限を設定する

レポートをほかの人に共有するには、閲覧者にアクセス権限を設定する必要があります。ワークスペースにユーザーを追加するときは、そのユーザーのロール(役割)を指定します。

主なロールは次の4つです。

ロール主な用途
Viewer(閲覧者)レポートを閲覧する
Contributor(共同作成者)レポートなどのコンテンツを作成・編集する
Member(メンバー)コンテンツの編集や共有など、より広い権限を持つ
Admin(管理者)ワークスペース全体を管理する

レポートを見るだけの人には、Viewerで十分です。必要以上の権限は付けないのが基本です。今回は「Test」というユーザーに「Viewer」権限を付ける方法を説明します。

Power BI Serviceで作成したワークスペース「Operational & Financial KPIs」を開き、「Manage access(アクセスの管理)」をクリックします。

「Add people(人を追加する)」画面が開きます。追加するユーザーの名前またはメールアドレスを入力し、ロールのプルダウンから「Viewer」を選んで、「Add(追加)」をクリックします。

追加すると、Manage accessの一覧に、ユーザーとロールが表示されます。

ワークスペースの権限設定に関する注意点
ワークスペースのViewerは、そのワークスペース内のレポートを閲覧できます。見せるべきではないレポートがある場合は、別のワークスペースで管理する方法を検討してください。
なお、ワークスペース全体ではなく、特定のレポートだけを共有する方法もありますが、本記事では取り扱いません。

RLS(行レベルのセキュリティ)
特定のユーザーに、自分の担当部門や拠点のデータだけを表示したい場合は、RLS(Row-Level Security)を利用できます。
RLSによるデータ制限はViewerにのみ適用され、Contributor、Member、Adminには適用されないため、権限設定には注意してください。
本シリーズでは、RLSの設定方法は扱いません。

Step 7:配布前に確認する

レポートを配布する前に、Viewerロールを付けた別のアカウント(または同僚)でレポートを開き、次の項目を確認します。作成者のアカウントで確認しただけでは、権限まわりの問題に気づけないことがあります。

確認項目確認のしかた
レポートを開いたときに最新月のKPIが表示される日付スライサーが最新月(例:2026/07/01〜2026/07/31)に設定されていること
日付スライサーで期間を変更できる期間を変えると、カードの数値が変わる
Line Nameスライサーの切り替えがカードとグラフに反映されるLine A、B、Cを切り替えて、表示が変わる
カードに現在値・前年同期比・目標達成状況が適切に表示される4つのカードで、達成(✓ Achieved)などの表示と色を確認する
3つのグラフは、日付スライサーを動かしても全期間を表示しているNet Sales & Operating Margin、Inventory Turnover、Defect Rateのグラフを確認する
最新月までのデータが反映されているグラフの右端が最新月になっている
Viewerがレポートを編集できないViewerのアカウントで、編集のボタンが表示されないことを確認する
必要な人だけがレポートを開ける「Manage access(アクセスの管理)」一覧に、見せたい人だけが追加されている
KPIの数値が正しいPower BI Desktopの結果と照合し、売上、利益率、在庫回転率などが想定どおりに表示されていることを確認する

確認が済んだら、共有先ユーザーをワークスペースに追加し(Step 6の手順)、レポートを開いた状態で、ブラウザのアドレスバーのURLをコピーして、チャットやメールで案内します。ワークスペースに追加されていない人は、リンクを受け取っても開けません。


まとめ

全9回のシリーズを通して、CSVの取り込みからレポートの共有までを一通り紹介しました。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

これまで進めた内容は、次のとおりです。

  • Power BI ダッシュボードの完成イメージを確認する(Vol.1)
  • Power BI Desktopをインストールする(Vol.2)
  • Power Queryで5つのCSVを取り込む(Vol.3)
  • Calendarテーブルを作り、スタースキーマでリレーションを設定する(Vol.4)
  • SUM・AVERAGE・DIVIDEでKPIメジャーを作る(Vol.5)
  • 前年同期比と目標達成状況をDAXで作成する(Vol.6)
  • スライサー・カード・グラフを配置する(Vol.7)
  • Power BI ダッシュボードの書式を整える(Vol.8)
  • Power BI Serviceに発行し、権限を設定して共有する(Vol.9)

Power BIレポートを一度作成すれば、毎月の作業は、データの差し替え、更新、再発行、確認が中心になります。「今月の売上は?」「前年と比べてどうか?」「目標を達成しているか?」といった問いにも、Excelで集計し直す必要がなく、スライサーで条件を選ぶだけで答えられます。空いた時間は、利益率が下がった要因の分析や、予実差異の確認など、経営判断に役立つ業務に使えます。

ぜひ、自社のデータとKPIでも、同じ手順で作ってみてください。


よくあるご質問(FAQ)

1. レポートを共有するには、どんなライセンスが必要ですか?

通常、発行者と閲覧者ともPower BI ProまたはPPUのライセンスが必要です。
ワークスペースがPremium容量またはFabric容量に割り当てられている場合は、無料ライセンスのユーザーでも閲覧できることがあります。詳しくは、組織のPower BI管理者に確認してください。

2. 共有したのに、相手がレポートを開けません。

次の項目を確認してください。
1. 相手にワークスペースのロールが付与されているか
2. 相手に必要なPower BIライセンスがあるか
3. 相手が正しい組織アカウントでサインインしているか
それでも開けない場合は、組織のPower BI管理者に確認してください。

3. 権限は後から変更できますか?

変更できます。
ワークスペースの「Manage access(アクセスの管理)」から、ユーザーのロール変更やアクセス権の削除ができます。

4. Power BI Desktopでレポートを修正したら、共有先の表示はどうなりますか?

Power BI Desktopで修正した内容は、再発行するまでPower BI Service上のレポートには反映されません。修正後にレポートを再発行することで、Service上のレポートも更新されます。

5. CSVを差し替えたのに、Serviceのレポートが古いままです。

CSVの保存場所と接続方法に応じて、更新方法を確認してください。
今回のサンプルのようにPC上のCSVを使用している場合は、Power BI Desktopでデータを更新し、レポートを再発行する必要があります。

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